夜は千の眼を持つ(上野顕太郎著)

待ちかねた久々の単行本。
まず見た目からして違う。本の厚さと装丁の凝りように、タダならぬものを感じる。
中身は、上野顕太郎作品の中でも、特に実験的といえるギャグマンガ群。
実験的作品というと、不条理か難解か独り善がりになりがちだが、ギャグそのものは非常に分かり易く面白い。そしてスゴイ。
ビーム連載陣のパクリマンガや、ゲソピンくん等、雑誌掲載時だからこそ面白いものもある。が、それはほとんど問題じゃない。
各話それぞれを雑誌で読んでいた時には感じなかったが、こうして一つの本にまとまると、何という圧倒的存在感であることよ。
ギャグマンガっつっても、アイデアのみの一発勝負では決してない。
むしろアイデアより、マンガとしての完成度に固執しているのではないか。
そのために、練りに練って、一切の妥協なく執拗に描き込んでいる。
また、いいアイデアを思いついたとしても、マンガとして成立するかどうか・意図するものがうまく伝わるかを判断し、頭の中で取捨選択を当然行っていると思うのだが、面白そうなら何でも描いてしまっているとしか見えない。
それにかかる手間や一般性は、完全に度外視して。
しかし、それが無謀でもナンセンスでもないことを、本書が証明している。
通常なら作画上実現不可能とすら思えることまで実行する根気と技術、その全てがきっちりギャグマンガとなっている驚くべき力業とセンス。
当代随一のギャグマンガ職人渾身の作であり、これこそ「名作」と呼ぶに相応しい。
ただ、これ、一般ウケはしないよなあ。
おそらく何かの賞は取るだろうから、それで話題になって売り上げ伸びるといいけど。
こういったものが内輪ウケ的なものでなく、市場的にも充分通用するということを示し、マンガの可能性を拡げていって欲しい。

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